地域の誇りを、観光ビジネスに変える
このたび、八戸商工会議所青年部の例会にて、dezanin代表・高橋雄一郎が講演を行いました。講演テーマは、「地域の誇りを、観光ビジネスに変える」。dezaninが取り組む「月夜のディナー」と「ローカルゴージャス」を題材に、八戸に眠る地域資源をどのように見立て、編集し、観光ビジネスとして育てていくのかについて、80分にわたりお話ししました。今回の講演で最も大切にしたのは、単なる事例紹介で終わらせないことです。月夜のディナーやローカルゴージャスは、dezaninの取り組みではありますが、本当に伝えたかったのは、私たちの事業そのものではありません。

地域には、まだ事業になっていない誇りがある
地元の人にとっては当たり前すぎる日常が、外の人にとっては忘れられない体験になる。そして、その価値を見立て、物語を添え、人をつなぎ、小さく試すことで、新しい観光ビジネスは生まれていく。
その考え方を、八戸という地域に置き換えながらお伝えしました。地域に足りないのは、資源ではなく、設計である。講演の中で繰り返しお伝えしたのは、「地域に足りないのは、資源ではなく、誇りを事業に変える設計である」ということです。八戸には、港があります。朝市があります。横丁があります。食文化があります。祭りがあります。工業があります。海があります。
そして何より、この地域で商売をし、雇用を生み、未来を考えている人たちがいます。それらは、地元の人にとっては日常かもしれません。しかし、外から訪れる人にとっては、その日常こそが価値になる可能性があります。観光とは、外から人を呼ぶことだけではありません。地域の営みを見つめ直し、誇りを経済に変え、地域の未来へ循環させていく仕組みです。飲食、宿泊、交通、一次産業、製造業、デザイン、広報、金融、士業、IT、教育。観光ビジネスは、観光業だけで完結するものではなく、地域の多様な産業が関わることのできる横断的な事業です。その意味で、異業種の事業者が集う青年部の皆さまと、このテーマを共有できたことは、大きな意義のある時間でした。
月夜のディナーとは、地域の自慢ごとを披露するステージ
講演の前半では、dezaninが取り組む「月夜のディナー」について紹介しました。月夜のディナーは、単なる食事会ではありません。地域の自慢ごとを披露するステージです。その土地の食材。昔から食べられてきた料理。海辺や里山の風景。漁師、農家、料理人、地域のお母さんたちの知恵。そして、その地域に受け継がれてきた暮らしの物語。これらを、食・場・人・物語・しつらえによって、一夜の体験として編集していきます。大切なのは、外から来た人に喜んでもらうことだけではありません。地域の人自身が、「これは価値だったんだ」「自分たちの暮らしは、人に届けられるものなんだ」と気づくことです。地域の価値は、外部から評価されて終わるものではありません。地域の人が、自分たちの町を信じ直したときに、初めて強い力になります。月夜のディナーは、食事を売る取り組みではなく、地域の誇りを来訪者に届ける取り組みです。ローカルゴージャスとは、高級化ではなく、本質を高密度で届けること。続いて、ローカルゴージャスについてお話ししました。ローカルゴージャスは、単なる高級観光ではありません。豪華な宿や高級食材を並べることが目的ではありません。dezaninが考えるローカルゴージャスとは、地域の本質を高密度で届けることです。その土地にしかない文化、技術、自然、人、営み。それらを少人数で深く味わい、移動、案内、食事、通訳、導線、配慮といった受入品質を整えることで、地域の価値を世界水準で届けていく。派手な豪華さではなく、静かな贅沢。形式ではなく、本質。外から持ち込む演出ではなく、その土地の中にある価値を丁寧に磨くこと。これからの地域観光には、この視点が必要だと考えています。
八戸の青い鳥発見ワーク
講演の中盤では、参加者の皆さまに「八戸の青い鳥発見ワーク」に取り組んでいただきました。問いはシンプルです。八戸で、地元の人には当たり前だが、外の人には価値になりそうなものは何か。
それを誰に届けたいのか。まず小さく試すなら、どんな形にできるのか。短い時間ではありましたが、参加者の皆さまが自分自身の仕事や地域の風景を思い浮かべながら、真剣に言葉を書き出している姿が印象的でした。地域の未来は、誰かが突然つくってくれるものではありません。一人ひとりが、自分の足元にある価値に気づき、仲間と話し、小さく試すところから動き始めます。このワークを通じて、八戸の中にある「まだ事業になっていない誇り」が、少しずつ言葉になっていく時間となりました。
八戸で何かが始まる予感
今回の講演を通じて、強く感じたことがあります。八戸には、すでに十分な素材があります。そして、それ以上に、地域を動かす人がいます。地域の価値を見立てる人。人と人をつなぐ人。実証の場をつくる人。事業として磨いていく人。未来に向けて行動しようとする人。観光ビジネスに必要なのは、天才的なひらめきだけではありません。すでにある価値を見抜き、つなぎ、動かす力です。今回の講演が、「いい話を聞いた」で終わるのではなく、八戸で新しい挑戦が始まる一つのきっかけになれば嬉しく思います。
受け継いだものを、未来の仕事に変える
地域には、先人たちが守り、育て、つないできたものがあります。港も、食も、祭りも、商いも、人のつながりも、最初から当たり前にあったものではありません。
誰かが汗をかき、誰かが守り、誰かが次の世代へ渡してきたものです。
だからこそ、今度は私たちの番です
受け継いだものを、ただ懐かしむのではなく、未来の仕事に変える。地域の日常を、誇りとして語り直す。まだ価格になっていない物語を、次の世代が希望を持てる事業に変えていく。dezaninはこれからも、地域に眠る見えざる価値を見つめ、言葉にし、体験にし、事業に変えていく取り組みを続けてまいります。八戸商工会議所青年部の皆さま、当日ご参加いただいた皆さま、そして講演の機会をいただいた関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
八戸の未来は、八戸で挑戦する人がつくる。
その一歩に関わらせていただけたことを、心より嬉しく思います。
